はごろもファンディング ~Maticメインネット~ 分散型クラウドファンディング

Yuya Sugano
Jun 3, 2021

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JPYC株式会社の発行するERC20自家型前払式支払手段である日本円ステーブルコインJPYCを使った分散型クラウドファンディングサービス『はごろもファンディング』をリリースしました。Polygon(Matic)ブロックチェーン上のスマートコントラクトで動作しており、運営会社などによるプロジェクトの管理やサービス手数料はなくすべて自立分散的に稼働している分散型のサービスとなっています。ファンディングは寄付型で調達額に対する手数料は現在0円となっております。トランザクションのガスコストのみ負担して頂ければどなたでもすぐに利用することが可能です。本記事では『はごろもファンディング』の使い方を解説していきます。

※素敵なサイトデザインはby hiroki ishiiさんによるものです。

Hagoromo Funding V1

既存のクラウドファンディングの問題点と分散型クラウドファンディングでの違い、『はごろもファンディング』のロードマップを取り上げたあとに具体的な使用方法の説明へ移ります。

  • クラウドファンディングの問題点
  • ロードマップ

使用方法は中段からあとにあります。

  • ウォレットを使ったアプリ接続
  • JPYCの許可とはごろもへの送金
  • プロジェクトの作成
  • プロジェクトの支援

クラウドファンディングの問題点

既存のクラウドファンディングのプラットフォームは株式会社や非営利団体により運営されています。このような運営主体による検疫やバイアスによってプロジェクトの操作や排除が行われる可能性が存在すると考えられます。例えばプラットフォームA社のクラウドファンディングでA社に不利益となる可能性のあるプロジェクトを掲載できるでしょうか。透明性や公平性がクラウドファンディングのサービスには求められており、その性質は非常に公共性の高いものであると考えることができます。

既存のクラウドファンディングサービスでは、利用者やプロジェクトの情報は運営者によって保持されています。ユーザの行動履歴、ファンディング履歴などの個人情報を含め運営主体へ情報を預けることによるリスクが存在すると考えられます(情報漏えいなど)。分散型プラットフォームの場合、情報はオンチェーンにオープンであり透明性とトレーサビリティが確保されています。この点についてはメリット・デメリットの見極め・判断が重要となってきます。

クラウドファンディング事業者の収益は手数料によって成り立っています。寄付型のクラウドファンディングで募集額の15~17%、購入型で8~25%ほどの手数料がかかることが知られています。分散型プラットフォームの場合は運営主体がいないため、この手数料を0%へ変更することが可能です。『はごろもファンディング』も手数料は現在0%ですが、プロジェクトの作成やJPYCの取り扱い、プロジェクトへの支援を行うためにはトランザクション処理にかかる手数料が必要です。現在アプリはPolygonブロックチェーン上にあるためMATIC建てのガス支払いを行えば、それ以外に必要となる手数料は存在しません。

この手数料の低さはプロジェクト作成者の参加障壁を下げ、優良なプロジェクトを社会創出する動機となると考えられます。今年に入りCAMPFIREやマクアケは手数料を下げることを発表しました。『はごろもファンディング』のような分散型で自治的なプラットフォームでは営利のために手数料を徴収する必要がそもそもありません。非中央集権型では不正なプロジェクトをスクリーニングすることができませんが、プロジェクト作成者のアドレスはトレーサブルであり、この追跡可能性から不正を働く動機は低減されると考えられます。

CAMPFIRE、手数料17%から10%に引き下げ

ロードマップ

はごろもファンディングではV1からV3までの開発をロードマップとして見据えています。V1では基礎的な寄付型のクラウドファンディング機能を提供することを目標とします。オープンソースで実験的(Experimental)、教育的(Educational)、社会的(Social)なプロジェクトを組成し最終的にはコミュニティによる運営を行えるような体制を構築していきます。

V2ではJPYC以外の取り扱いの検討、寄付型以外のクラウドファンディング形態の検討(購入型、貸付型など)を行い、V3ではガバナンストークンの導入とコミュニティの意思決定による運営を行えるようなスマートコントラクトの開発を行う予定です。購入型ではNFTなどスマートコントラクトと親和性の高い返礼品を組み込めむなどのユースケースが考えられます。

taakeさんの『JPYCの使い方を考える記事』で取り上げて頂きました。Webのクラウドファンディングと異なり分散型でのクラウドファンディングを行う上での課題やロードマップ上のヒントとなるような情報をご意見として頂きました。

  • 手数料0で運営するのは大変だと思うので、Devのstakes.socialできちんと資金調達をしてほしい
  • クラファン実施者はHiDeで自分のプロジェクト説明を行うなどしてファンの熱量を高める施策とセットですることで効果倍増するのでは(by 和らしべCEO)
  • 寄付してくれた人のETHアドレスはわかるので、返礼品としてNFTをする系のサービスは現在すごく需要ある(いろいろ妄想可能)
  • 一方で、モノを返礼品にする系は受け取る側の住所等個人情報を聞き取る必要があり、面倒
  • クラファン実施者側が、受け取ったJPYCをどうやって活用するか、という出口問題の解決が必要→ここは(検閲)により何とかしたいというお気持ち
  • 個人的見解としては、ウェブの世界で完結する系のクラファンで特に親和性が高い

ウォレットを使ったアプリ接続

『はごろもファンディング』ではMaticメインネットワーク上のJPYCを使用することができます。Polygon(Matic)ネットワーク上のJPYCについては以下の公式noteを参考に入手してください。またJPYCファンコミュニティによる『はじめてのJPYCーーJPYCチュートリアルーー』ではBSC(Binance Smart Chain)からPolygon(Matic)ネットワークへトークンを移す方法についてまとめられています。

Webウォレットとして使用できるMetaMaskの使い方についてはこちらの記事が参考になりました。

ウォレットのネットワークをMaticメインネットワークに設定した上でhttps://hagoromo-funding.web.app/へアクセスします。以下の画像のように『はごろもファンディング』のトップページが表示されます。同様の表示がされない場合には接続しているネットワークが正しいか確認してください。Maticのメインネットワークに接続してください。

誤ったネットワークへ接続している場合にはエラーメッセージのポップアップが出力されます。以下は間違えてEthereumメインネットへ接続してしまった例です。”Failed to load… Confirm your wallet and it is connected to Matic main network.”と表示されています。

JPYCの許可とはごろもへの送金

はごろもファンディングではJPYCの使用がサポートされています。JPYC(JPYCoin)は日本初の日本円ステーブルコインで、ERC-20規格のトークンでありEthereumをはじめとして複数のブロックチェーンのネットワークで動いています。法律上のたてつけはJPYC株式会社様が発行する資金決済法上の自家型前払式支払手段です。

UniswapなどのDEXと同じようにまずははごろも上でJPYCの使用を許可する必要があります。許可したJPYCの金額を上限としてJPYCを『はごろもファンディング』のコントラクトへ移動することができます。移動したJPYCは各プロジェクトへの支援金としてはごろもファンディング内で使用することができます。

”承認金額(JPYC)”は『はごろもファンディング』へ許可したJPYCの金額を、右下の”はごろも”は『はごろもファンディング』へ移動したJPYCの金額を表しています、この例では両方とも0 JPYCです。

まずはJPYCを許可してみましょう。許可したい金額を入力して『許可する』をクリックします。トランザクションの確認を求められるので、内容を確認した上でトランザクションを作成します。ここではMetaMaskを使用してトランザクションを確認しています。

トランザクションが承認されると承認金額が増えていることが確認できます。この例では100,000 JPYCを許可したので承認金額(JPYC)は100000となっています。この承認金額を上限としてウォレットから『はごろもファンディング』のコントラクトへJPYCを移動することができます。

ウォレットの下の入力ボックスへ移動したいJPYCの金額を入力して、『はごろもへ移す』をクリックします。今回は先ほど許可した100,000 JPYCを移動してみました。トランザクションが承認されると”はごろも”の部分に移動されたJPYCの金額が表示されるようになります。ウォレットからJPYCを移したのでウォレットの残高は減額されている状態です。

プロジェクトの作成

プロジェクトはウォレットおよびMatic メインネットのアカウントを持つかたは誰でも作成することができます。他のクラウドファンディングサービスのような登録作業や手数料の支払いは不要です。プロジェクトの作成にかかるMATICによるガスコストのみの負担が必要となります。

プロジェクト名、WebサイトのURL、支援の締め切りまでの日数および目標金額(JPYC建て)を入力して作成するをクリックします。ウォレットからトランザクションの確認を求められるのでトランザクションのガスコストを確認してプロジェクトを作成します。

ページ下部のプロジェクトを支援するに新規に作成したプロジェクトが追加されています。以下は100,000 JPYCをターゲットとしたはごろもファンディングプロジェクトの例でまだ支援はされていません。プロジェクトを作成した人以外はカード下部のJPYCの入力ボックスへ金額を入れて、支援するをクリックすることでプロジェクトを支援することができます。

支援締切日までに目標額に到達した場合には、締切日以降にプロジェクト作成者が資金を引き揚げることが可能となります。目標額へ到達せずに支援締切日を迎えた場合には、それぞれの支援者は対象のプロジェクトから支援した金額を回収することができるようになります。資金の引き揚げや回収にはガスコストがかかりますのでご注意ください。

プロジェクトの支援

プロジェクトの作成者以外は『はごろもファンディング』に移動したJPYCを使って、プロジェクトを支援することができます。プロジェクトのタイルの下部に支援したいJPYCを入力して支援をクリックすると、支援総額が増えることが確認できます。

支援締切日までに目標額を達成したプロジェクトの作成者は、支援締切日以降にファンドを引き揚げることが可能です。目標額へ達成しなかった場合、各支援者はプロジェクトから支援したJPYCをすべて回収できるようになります。

目標額を達成している場合は”プロジェクトを終了する”、達成していない場合には”支援を引き揚げる”ボタンが表示されるようになるので、クリックすることでそれぞれのトランザクションを確認し資金を授受することが可能となります。繰り返しですが、それぞれの操作にはMATICによるガスコストがかかる点はご注意ください。

  • 目標額を達成している場合は締切日以前でもプロジェクトを終了できます
  • 目標額を達成していてもは締切日以前であれば支援額を追加できます
  • 目標額へ届かず締切日を過ぎた場合には支援を追加できません

“プロジェクトを終了する”ボタンを押すと、資金引き出しステータスが引き出しへ変化し、支援総額がプロジェクト作成者のウォレットへ送金されます。プロジェクトの終了はプロジェクト作成者以外も処理できるようになっています。つまりプロジェクト作成者でない第三者がプロジェクトを終了するをクリックすると、プロジェクト作成者へ支援額が送金されるようになっています。

”支援を引き揚げる”の場合には支援した金額が『はごろもファンディング』のコントラクトへ移動された資金として返却されます。スマートコントラクトからウォレットへ送金したい場合には、『ウォレットへ戻す』をさらにクリックする必要があります。

『はごろもファンディング』は現時点ではHagoromoV1として寄付型のクラウドファンディングのみを行えるサービスとなっています。購入型や貸付型のサポートはV2以降の検討事項です。

参考: クラウドファンディングを巡る諸問題:展望

開発者・ユーザなど募集中

『はごろもファンディング』は実験的・社会的なオープンソースプロジェクトです。どなたでも開発への参加およびユーザとしてのテスト、改善提案などを行って頂けます。開発はHTML/CSS、React、Javascript、Solidity、Truffle、Firebase hostingを使っています。新しい技術スタックを試したい方も大歓迎です。TwitterでDMください。

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Written by Yuya Sugano

Cloud Architect and Blockchain Enthusiast, techflare.blog, Vinyl DJ, Backpacker. ブロックチェーン・クラウド(AWS/Azure)関連の記事をパブリッシュ。バックパッカーとしてユーラシア大陸を陸路横断するなど旅が趣味。

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